
(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
ドイツの有力な報道機関であるドイツ通信社(DPA)が報じたところによると、フリードリヒ・メルツ首相が率いる大連立政権で新たに経済相に就任したカテリナ・ライヒェ氏は、首都ベルリンの郊外で開催された「東ドイツフォーラム」に出席した際、苦境が続く国内産業の支援策の具体的な内容を7月中旬までに発表すると発表したようだ。
詳細は不明だが、その主な内容は、電気料金の引き下げと労働市場改革の二本柱となるようだ。いずれも企業活動の活性化を狙った供給サイドの支援策である。
これに先んじてライヒェ経済相は、南部バイエルン州で開かれたルートウィヒ・エアハルト・サミットでの講演で、これまでの再エネ政策の見直しとガス火力発電の増設に言及している。
そのため、補助金による電気料金の引き下げのみならず、電力供給体制そのものの見直しが進む可能性が出てきている。
他方、労働市場改革に関しては、大局的には雇用あるいは賃金の弾力化が図られることになるだろう。3年連続のマイナス成長が視野に入る状況で、雇用を維持しつつ賃金を増やすような余裕など、ドイツの企業にはもうない。
ガス火力を増設するにしても、雇用や賃金の弾力化を図るにしても、構造的な問題であるため、短期間での改善は見込みがたい。とはいえ、ライヒェ経済相の発言が端的に物語るように、新政権は経済界を支援する姿勢を鮮明にしている。それだけ、ドイツの競争力ならびに生産性が低下していることに、新政権は強い危機感を抱いているのだろう。
ここで、最も簡便な労働生産性の指標である米ドル建て一人当たりGDP(国内総生産)を用いて、ドイツと日本の推移を比較したい。