
ロシアの侵攻で始まったウクライナ戦争は、2022年2月の開戦から3年4カ月となる現在も続いており、停戦の糸口は見えていません。ロシアの侵略は、多大な犠牲の上に築かれた第2次世界大戦後の国際秩序を揺るがし、世界各国から非難されています。ウクライナ戦争は今後、どうなるのでしょうか。イスラエルとイランも交戦状態となり、国際社会は不安定さを増しています。ウクライナと欧州、世界はどこへ向かうのでしょうか。ウクライナ戦争開始前の2021年10月から2024年10月までウクライナ大使を務めた松田邦紀氏に聞きました。
(西村卓也:フリーランス記者)
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——停戦に向けてロシアとウクライナが直接交渉を続けていますが、合意に至らないのはなぜでしょう。
松田邦紀・前ウクライナ大使(以下、敬称略):ウクライナ戦争で獲得できなかったものを外交で手に入れようと、ロシアが多くの要求を突きつけているからでしょう。占領地をロシア領にし、ウクライナ軍を撤退させる。ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)に加盟せず、外国軍も駐留させない。それだけでなく、バルト三国からのNATO軍撤退などもロシア側の要求に含まれています。

——対するウクライナの主張は?
松田:まずは30日間、即時・全面的に停戦し、落ち着いてから終戦に向けた交渉を進めるという内容です。この内容は昨年秋から今年にかけて、ウクライナが米国や欧州各国とすり合わせてできたものです。今年2月には米国ホワイトハウスの大統領執務室で、トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が口論する場面もありましたが、ウクライナと米欧は基本的には一致しています。
ウクライナも欧州にロシアへの圧力を強めるよう求め、欧州連合(EU)はロシア産原油の価格引き下げを盛り込んだ新たな制裁案を準備しているところです。
——ロシアが強硬な要求を掲げ、その旗を下ろさないのはなぜですか。