
トランプ大統領が「TACOトレード」という言葉に怒り心頭に発しているようです。もちろん日本語のタコ(蛸)ではなく、英経済紙のコラムニストが考えた“TACO(Trump Always Chickens Out、トランプはいつも逃げる)”という造語のことです。
金融市場ではトランプ関税の妥協を見越してリスクをとる「TACOトレード」が話題となっています。というのも、4月9日にトランプ大統領が「相互関税の90日間の一部発動停止」に言及して以降世界の株式市場は大きく上昇に転じ、米S&P500種指数は4月8日に付けた年初来安値から一時約20.4%も上昇、3万1000円割れ寸前まで下落していた日経平均も一時3万8000円台を回復するなど、株式市場はトランプ大統領の通商交渉における「腰砕け」を好感して買戻しが大きく進んでいるからです。
とはいえ、「米中の対立は終わった」とばかりに手放しでリスクオンに走るのは、やや気が早すぎるように感じます。というのも、トランプ大統領が負けず嫌いというのもさることながら、米中の対立は一朝一夕に解決するような生易しいものではないからです。
(白木 久史:三井住友DSアセットマネジメント チーフグローバルストラテジスト)
TACOトレード理論とは
金融市場で「TACOトレード理論」が話題になっています。「Trump Always Chickens Out(トランプはいつも逃げる)」の4語の頭文字をとったもので、フィナンシャル・タイムズのコラムニストであるロバート・アームストロング氏が考えた造語です。アームストロング氏は自身のコラムで、トランプ大統領が通商交渉で妥協する可能性に賭ける「TACOトレード理論」が金融市場で有効に機能している、と指摘しています。

負けず嫌いで知られるトランプ大統領ですが、5月28日の会見時に記者から「TACOトレード」という言葉についての「受けとめ」を聞かれた際には、「むかつく質問だ(Nasty question)」と怒りをあらわにしました。