
「先生、昨日から東大、大変なことになっていますね」
突然電話をもらったのは、先週金曜日のことでした。自分の仕事が完全にオーバーフローしており、「東大」で何があったのか、私は全く知りませんでした。
「何かあったんですか?」
「え、知らないんですか? 阿部俊子文部科学大臣も、東大で事実関係を確認中とコメントしたみたいですよ」
すっかり仕事で浮世離れしていた私が、そこで知ったのが「東大大学院教授ら高額接待強要か? 共同研究団体が提訴へ」の報道です。
大手メディアの既報によれば、医学系研究科の教授らが「社会連携講座」に出資している共同研究の外部団体「日本化粧品協会」から「風俗接待」など数千万円に及ぶ不正な饗応を受けたという。
まずそれだけで、事実であれば大学の顔に泥を塗る恥ずかしい話です。
ところがそれだけにとどまらず、昨年8月、60代の教授は1300万円からの現金を要求したという。
接待していた側が逡巡すると、「『明日にでも講座(共同研究)を閉めることができる』とか言われて。『早くカネ持ってこい。なめてんのか殺すぞ』など、暴言を吐き放題だった」というのです。
「東大側を相手取り、来週にも裁判を起こす方針です。協会は、東京大学にも通報したところ、研究を中断させられたと主張していて、研究の再開や約3900万円の損害賠償を求めるとしています」(報道より)
私:でもそれはちょっと変ですね。不正を働いた教員ではなく、総長以下、東大を相手取って訴訟を起こすとなると、それはかなりの大事ですよ。
知人:いや、大学に公益通報したのに、当局が何もしなかったらしくて・・・。
私:あ、そりゃそうだ。トラブルはなかったことにするのが、いまの大学コンプライアンスは常態だから。それはきちんと膿を出した方がいい。潮時かもしれませんね。
と、即座にこの原稿を書くことを決めました。
実は、東京大学には昨年来、やはり昨年3月から問題を起こしている「兵庫県」と類似した公益通報潰しの現状があります。
以下では、公益を念頭に構造的な問題を指摘し、一教官というより一納税者として、疾病の根治を期待するものです。
戦争の歴史は自由に書き換えてよい?
先週私は、数人の学生から憤懣やるかたない相談を受けました。
「必修」の授業の中で教員が「戦史は自由に書き換えてよい」という意味合いの発言をし、それでお金集めなどもしている、と学生たちが激怒しているのです。
その中の一人は被爆地の出身で、原爆関係の資料の取り扱いに極めて強い疑問、というより怒りを覚えたようで、私に訴えてきました。
学生:こういうの、なんとかならないんですか。大学はほったらかしなんですか?
私:まあ公益通報とかしてみてもいいかとは思う。ただね、いまの東大当局では、たぶん握りつぶされてしまうと思う。
実は、1999年に私が国立大学東京大学に任官して以降、
ところが、ある時期以降、すべて握りつぶされるようになりました。
その時期というのは、大学のコンプライアンス対応システムが変化して以降、具体的には2024年4月から、全く動かなくなりました。
大学で何があったのか?
「コンプライアンス相談窓口」が実質的に閉鎖され、機能しなくなったのです。
今回の「エロ接待」(?)も、それ自体大問題ですが、これを昨年9月「東京大学コンプライアンス通報窓口」に訴えたにもかかわらず、半年にわたって大学は何もせず、「共同研究は中止」と一方的に告げて来たので提訴を準備した、と報道されています。
週刊文春の記事で確認してみましょう。