若手なのにすでに大御所の安定感があるo+hによる「休憩所1」(特記以外の写真:宮沢洋)

今回の大阪・関西万博では、公募型プロポーザルで選出された若手建築家20組が「休憩所」「ギャラリー」「展示施設」「ポップアップステージ」「サテライトスタジオ」「トイレ」など、パビリオン以外の“付属施設”を分担して設計した。ここで起用された主に30代~40代前半の建築家たちはきっと今後、国内外で活躍するに違いない。それは、それぞれの建築のクオリティを見れば断言できる。“若手20組”の施設を全て紹介する。

(宮沢 洋:BUNGA NET編集長、編集者、画文家)

若手建築家20組を全紹介
西側エリア:学会賞受賞者2組らが新たな屋根を競う(本記事)
海側エリア:素材と構成に注目、残念石からグネグネ樹脂壁まで
東側エリア:注目株が輝き、冴えていた藤本プロデューサーの差配

 まずは西ゲート周辺(リングの西側)から。

 夢洲駅に近いのは東ゲートなので、1日で回ろうとすると東側と海側(南側)だけでタイムアウトになる可能性がある。建築好きは西の情報も知ってから、回り方の戦略を組み立ててほしい。

会場に設置されていた案内図に、本記事でリポートする施設の連番(赤丸)を載せた

(以下、太字部は開幕1年前の2024年5月にEXPO2025大阪・関西万博公式Webサイトで発表された概要データと設計コンセプト。細字部は筆者のひと言。連番は地図に対応)

①展示施設(設計:小室舞)

設計者:小室舞 KOMPAS JAPAN 株式会社一級建築士事務所/主用途:展示場/階数:平屋建/延床面積:1,271.94m2/構造:鉄骨造、木造

【設計コンセプト】
「非中心・離散」「多様でありながら、ひとつ」をテーマとしたこの関西万博の会場構成の特徴を取り入れた展示施設です。夢洲の湿地帯をイメージした中庭周りにさまざまな展示やイベントが行われるユニット群が並び、それらをつなぐリング状の通路を巡って来訪者は自由に展示を回遊します。緑が絡む蛇篭の壁に光や風が流れて雨水を循環利用し、ランドスケープと建築が密接に結びついた中庭ではこれからの環境空間の実践を試みています。 木の葉のような屋根が連なる半屋外空間が散らばり、心地よい森のように緩やかにまとまりながらも多様な場を創出します。

 小さな分棟の建物群(それぞれが小パビリオン)で、蛇篭の円筒に木の葉のような屋根が載っている。かわいい。「蛇篭(じゃかご)」というのは金属で編んだ籠に砕石を詰めたもの。本来は河川の護岸や斜面の補強などに使用される。建築のランドスケープにも使われるが、建物本体に使うのは珍しい。これだけでも構造としてもちそうだが、概要データを見ると構造形式は鉄骨造として設計したようだ。

 隣接する木造のトイレ↓も、蛇篭壁ではないが、同じ形の木の葉屋根のデザインでかわいい。